脊柱管狭窄症への鍼治療は下肢(脚)の神経血流を改善させることにより症状を緩和します。
腰部脊柱管狭窄症による脚の痛みやしびれの主な原因として、脚の神経血流の低下が挙げられています。いくつかの鍼治療方法によって、異なる作用機序(経路)を介して、神経血流が改善されることが実験により明らかになっています。当院では、研究データの有効性(効果の程度)に基づいて、治療の選択順位を決定しています。
第1選択:傍脊柱部刺鍼
脚の神経の基になる神経が支配する筋肉に刺激する鍼治療方法です。比較的、心地良いと感じる方が多く、患者さんの負担が少なく、一定の効果が見込める鍼治療法です。
傍脊柱部刺鍼は、偽鍼との比較試験において、症状の明らかな改善が認められます。
半数以上の方に血流改善効果が見られます。 1/2の確率で効く治療は『結構良い治療法』と言えます。
第2選択:坐骨神経鍼通電
脚の神経(坐骨神経)に対して直接的な刺激を与える鍼治療方法です。治療中、症状部位(脚)への強い刺激感がありますが、高い効果が見込める鍼治療法です。
鍼刺激により血圧や心拍数に影響することなく、神経血流が増加します(運動したり怒ったりすると、血圧や心拍数が上がって血流も変化しますが、そのような血流の変化とは異なります)。
坐骨神経刺鍼部位(殿部)の模式図
おしりの真ん中辺りに、9~12cmの長さの鍼を使って5~7cm程度の深さまで刺入します。 鍼が坐骨神経に到達すると、脚への強い刺激感(神経の走行に沿って電気が走るような感覚)があります。
第3選択:陰部神経鍼通電
脚の神経(坐骨神経)の血流を支配する神経に刺激を与える鍼治療方法です。治療そのものは不快と感じる方が多い一方、高い割合で安定した効果が見込める鍼治療法です。
薬剤を投与した検証により、それぞれの作用機序(経路)が明らかにされています。
※陰部神経鍼通電と坐骨神経鍼通電の下肢(脚)神経血流の増加は、異なる作用機序(効果発現の経路)によって起こることが明らかになっています。
陰部神経刺鍼部位(殿部)の模式図
名前の通り、 陰部に刺激感があるので、 治療そのものは不快と感じる方が多いです(心地良いという方もちらほらいらっしゃいますが…)。