鍼通電療法は、腱の修復促進、再断裂の予防効果が期待できます。
筋肉の付け根は『腱』という組織になっていて、腱は筋肉の過剰な収縮を抑制する役割を担っています。
そのため、筋肉に急激な収縮力が働くと腱に大きな負荷がかかり、その力が強過ぎると腱は切れてしまいます。
それによって起こるのが、『腱断裂』や『腱損傷(腱の部分断裂)』です。
ジャンプや踏み込み動作などの際によく起こるアキレス腱断裂などが代表的な例です。
腱は断裂後、早く修復(癒合)しないと、関節の動きに支障を来します。
また、一度断裂すると、高い頻度で再断裂が起こります。
腱断裂は、スポーツが思うようにできなくなるだけでなく、場合によっては日常生活にも影響が出ることもあります。
鍼は、少ない侵襲(手術などの必要がなく少ない負担)で、生体の深部組織へ効率的に電気刺激を与えることができ、ある条件下での鍼通電療法は、腱の修復を促進させ(早め)、治療の継続期間によっては、再断裂の予防効果が期待できます。
アキレス腱断裂モデルを用いて、直流鍼通電刺激の効果を検証した実験結果があります。
※鍼以外の電気刺激の影響に関する報告や、鍼通電の作用を検討した結果からすると、一般的によく用いられる通電療法(交流電流)ではなく、直流電流が効果的です。
直流鍼通電により細胞増殖や修復に必要な成長因子の発現が増大します。
病態(アキレス腱断裂)モデルを用いた実験において、腱断裂部に直流鍼通電刺激を与えると、修復早期において細胞増殖や成長因子の発現が増大することが明らかになっています。
細胞増殖や成長因子の発現増大は、腱の修復が促進されることを意味します。
傷んだ腱が早く良くなれば、関節の動きも早く回復します。
長期間にわたり鍼通電を継続して行うと、短期間のみ行った場合と比べて断裂してから長期が経過した腱の力学的強度が高くなります。
断裂後早期だけでなく、修復が完了するまでの期間、鍼通電を継続して行うことにより、修復腱の強度が高まることが確認されています。
つまり、腱の再断裂が予防できるのです。