骨の連続性が断たれた状態を骨折と言います。
いわゆる『ひび』は、骨の一部が連続性を欠いた状態で、不全骨折と言います。
骨を含め、人体組織すべてに共通することですが、修復(癒合)するには血流が必要です。
血流が悪いと、修復(癒合)が遅れ(遷延癒合)、場合によっては治癒機転が停止し、偽関節が生じます。
偽関節とは、本体、関節ではない部位が関節様になってしまった状態を言います。
骨癒合が速やかに完了するように、創外固定器(体外で骨を固定する方法)を介して電気刺激を与えたり、超音波刺激を行うなど、様々な治療方法があります。
その1つとして、鍼を用いることにより、骨折局所に効率的に電気刺激を与えることができます。
創外固定ができない小さな骨にも電気刺激が行える、超音波刺激で起こるエネルギーの減衰がないなど、いくつもの利点があります。
ある条件下での鍼通電療法は、骨癒合を促進させ(早め)、治癒した骨の強度を高める可能性が期待できます。
骨折モデルを用いて、直流鍼通電刺激の効果を検証した実験結果があります。
※鍼以外の電気刺激の影響に関する報告や、鍼通電の作用を検討した結果からすると、一般的によく用いられる通電療法(交流電流)ではなく、直流電流が効果的です。
直流鍼通電を行うと、刺鍼のみや無処置よりも新しい骨が多量にできます。
直流鍼通電により骨癒合部の力学的強度が高まります。
病態(骨折)モデルを用いた実験において、骨折部に直流鍼通電刺激を与えると、新しい骨が多量にできて、癒合した部分の力学的強度が高まります。
直流鍼通電により骨欠損(骨の一部が欠けた)部に新しい骨ができます。
病態(骨欠損)モデルを用いた実験において、欠損部に直流鍼通電刺激を与えると、新しい骨ができ、癒合が確認できます。 ちなみに、無処置では(何もしないと)骨吸収により欠損部が拡大してしまいます。