肩こりに対して鍼治療を行う際は、筋肉の過度な緊張等の反応が出現している深さまで鍼を刺入する方が効果的です。
鍼灸治療が肩こり症状に効くことは知られていますが、鍼を刺す深さ(刺鍼する組織)によって効果が異なることはご存知でしょうか。
よく「先生、私、肩凝っていますか?」と聞かれますが、『わからない』というのが答えです。
何故なら、肩こりとは 『後頸部から肩甲間部にかけての筋の緊張を中心とする不快感・違和感・鈍痛などの症状』と定義されています。
つまり、肩こりは自覚的な症状なので、他人がその有無や程度を決めることはできないからです。
ただし、絶対という訳ではありませんが、不快感・違和感・鈍痛などの症状が出現している部位は、多くの場合、筋肉の過度な緊張と一致しています。
鍼治療は、過度に緊張した筋肉に刺激を与えることで、筋肉の循環や緊張状態を変化させ、肩こり症状を改善しますが、鍼の刺入深度(鍼を刺す深さ)によって、その効果は異なります。
その根拠として、肩こりに対して、浅い鍼(皮膚や皮下組織のみへの刺鍼)と深い鍼(筋組織まで刺入した)の効果を比較した研究結果があります。
深い鍼の方が治療を継続している期間の改善効果が高いことが分かります(浅い鍼は治療が終了すると症状が再燃する傾向が見られます)。
この結果から、皮膚・皮下組織などの浅層へのみ刺鍼するよりも、過緊張している筋組織(筋肉)まで鍼を刺入して直接、刺激を与える方が、肩こり症状の改善に高い効果が見られます。