鍼治療は、頸部神経根の障害による上肢(腕や手)の痛みやしびれに対しても効果が見込めます。
頸椎の退行変性(加齢に伴って生じる変化)による機能的・器質的な異常に起因する神経根(頸肩部や腕・手を支配する神経の根元)の障害を総称して、頸部神経根症と言います。
頸部神経根症の原因疾患としては例えば、頸椎椎間板ヘルニア、変形性頸椎症などが挙げられます。
頸椎の横断面
骨や軟部組織(椎間板など)の変性によって神経が障害されるのが頸部神経根症です。
頸部(首、背中)への鍼治療は、神経根症によって出現した上肢(腕や手)の痛みやしびれに対しても一定の効果が得られます。
当院では、頸部への鍼治療に加え、腕神経叢(頸、肩、上肢を支配する神経の叢)へ刺激を与えるさらに効果的な治療も行っています。
頸部の傍脊柱筋への刺鍼による頸部神経根症に起因した頸部痛、上肢の痛み、上肢の異常感覚(しびれ)の変化を観察した報告があります。
鍼を刺した部位(頸や背中)だけでなく上肢(腕や手)の症状も改善します。
頸部(傍脊柱部)への刺鍼により、頸部痛だけでなく、上肢の痛みやしびれなどの症状もある程度、改善することが示されています。
頸部(傍脊柱部)への刺鍼で効果がない場合には、上肢を支配する神経(腕神経叢)への直接的な刺激を行うことで高い効果が得られます。
腕神経叢(腕や手を支配する神経の叢)に刺激をした際の上肢神経血流(腕の神経血流)の変化を観察した実験結果があります。
動物実験において、腕神経叢への刺激による神経血流の増加反応はどの個体でも安定して起こります。
この結果から、腕神経叢への刺激は、安定した神経血流の増加反応により、症状の改善に効果的に働くと考えられます。